広島市立の小中高校で平和教育に使われている教材が2023年度から改訂され、10年前から掲載されてきた漫画「はだしのゲン」が別の教材に差し替えられることになった。教材を発行する市教育委員会は見直しの理由を「被爆の実相に迫りにくいと判断した」としている。
改訂されるのは、市教委が全市立小中高校で取り組んできた「平和教育プログラム」の教材。国語や道徳などの時間を使って「平和の担い手」を育成するために続けており、2013年度からは統一の教材「ひろしま平和ノート」を発行した。各学年で年間3時間を授業に割いてきた。
19年度から、改訂の必要性を検証するため、教員や大学教授、平和記念資料館の職員らを交えて議論を重ねてきた。その結果、被爆の実相を理解し、継承することができる内容か▽学んだ事実をもとに考えたことを発信していく力を身につけることができる内容か▽発達段階に即した内容か――などの四つの観点で見直しを始めた。23年度からの新しい教材では、小1~高3の12学年が年間に充てる全36回分のうち26回分の内容が改訂されることになった。
「はだしのゲン」はこれまで、小3と高1でいくつかの場面が引用されていた。小3では、主人公のゲンたちが戦時下の苦しい生活の中で、家族のために浪曲を歌って日銭を稼いだり、栄養不足の母親のために近所の家のコイを釣ったりする場面が使われていたが、有識者からは「浪曲はいまの児童にはなじまない」「コイを盗む描写は誤解を与える恐れがある」という指摘があったという。
新教材では、16歳の時に原…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル